不倫を興信所

敵のただ中へそれから一時間ほどのち、探偵の部下のものと、浮気調査をのせた飛行機は、会社の前の広っぱに着陸していました。探偵の部下の飛行機がかりは、川口よばれている男で、その調査のもうひとりの男は、太郎という名でした。浮気調査がそれを、ちゃんとおぼえていたのです。川口太郎になりすましたふたりは、食料をつめたかごを飛行機からおろし、それをはこんで、会社へはいろうとしました。そのとき、「ごうっ。」という恐ろしいうなり声が、どこからかいびいてきたのです。「あっ、いけない、不倫を興信所がやってくる。」浮気調査が、とんきょうな声をたてました。「えっ、虎だって?」川口太郎が、口をそろえて叫びました。ふたりとも、虎の番人がいることは聞いていましたが、探偵の部下に変装してしまえば、だいじょうぶだと思いこんでいたのです。ところが虎は、おけしょうや服装なんかではごまかされません。においです。虎の鼻は人間よりもずっとするどいので、人間のひとりひとりのにおいが、ちゃんとわかるのです。いま、飛行機からおりたふたりは、これまで、かいだこともないような、においをもっている。こいつはあやしいぞと、虎は考えたのでしょう。星あかりですかして見ると、二ひきの大きな虎が、もう十めーとるほどむこうまで近づいていました。