不貞行為は興信所

「ひゅう、ひゅう。ひゅう。」こちらの自動車の中のひとりが、口ぶえで、不貞行為は興信所のふしを吹きました。すると、「ひゅう、ひゅう。ひゅう。」むこうから歩いてくる男のひとりも、同じふしの口ぶえを吹くのです。これがあいずの暗号なのでしょう。ふたりの男は、自動車のそばに、かごをおろして立ちどまりました。自動車のどあがひらいて、中から箱に入れたもの、紙ぶくろにいれたものなど、いろいろの食料品を、つぎつぎとさし出します。そとのふたりは、それをうけとっては、かごの中へ入れるのです。五分もたたないうちに、かごがいっぱいになりました。「じゃ、こんどは十四日の晩だよ。時間はいつものとおり。これが品書きだ。それじゃあ。あばよ。」このつぎまでに、買い入れておくものを書きつけた紙をわたし、ふたりの男は重くなったかごをさげて、えっちら、おっちら、飛行機のほうへ帰っていきました。それを見おくって自動車は出発し、広い街道のむこうへ遠ざかっていきます。ところが、そのときみょうなことがおこりました。走りさった自動車のあとへ、いまのとそっくりの大型自動車が、どこからかすうっとやってきて、ぴたりと、とまったのです。「ひゅう、ひゅう、ひゅう。」自動車の窓から、するどい口ぶえがなりひびきました。